赤身(AKAMI)

クロマグロの握り寿司の画像
黒鮪の握り

黒鮪の握り

【握り寿司: 赤身】すしネタの華、黒鮪(本鮪とも、シビとも呼ばれる)。冷凍・解凍技術の発達で年中美味しい鮪が出回る世の中だが、国産黒鮪は秋から冬に旬を迎える。今では大人気の鮪は、江戸時代、下魚(げざかな)として敬遠され、特に脂の乗ったトロは捨てられていた。上質な酸味とほのかな脂の甘みを最大限に引き出すため、部位、漁法などによって4~10日間の熟成期間を取る。艶やかなその姿はすしネタの王様と呼ぶにふさわしい。赤身を煮きりに漬けたヅケ鉄火巻きなど、さまざまな味わいを楽しめるのが、鮪の醍醐味だ。死後の細胞で起こっている物質変化の中で、有機酸などから生成される酸味、グリコーゲンから生成される糖類の甘み、そして熟成によって生成される旨みが、鮪の複雑な味わいを形成している。勿論、脂の量も大きく関与する。

黒鮪が常食しているのは背黒イワシで、台湾から沖縄の間で春に産卵された黒鮪は、これを追いかけながら、日本列島の沿岸を黒潮に乗って北上、秋が深まる頃に北海道周辺に到達する。そして津軽海峡や噴火湾に入ったマグロは餌をイワシからこの海域に多いスルメイカ秋刀魚に変える。この食生活の変化がマグロの脂の質を大きく向上させ、何とも言えない甘みを生むとされる。

かなり興味深い話にはなりますが、狭い津軽海峡だが、青森県の大間側で獲れる黒鮪は、やや脂が強く、北海道側の戸井で獲れるものは、くどくさがないと言う。青森側は黒鮪の餌となる青魚が多く、北海道側はイカが多いので、味に特徴が出ていると言われる。

クロマグロの身質は大変良く、刺身や寿司ネタとして大人気である。赤身は100g当り25g前後のたんぱく質と約1.4gの脂質を含み、ミネラルや各種ビタミン及びEPAやDHAにも富み、美味で栄養価も高い。腹部のトロの部分は、20g程度の脂質を含み、脂質のより多い部分を大トロ、やや少ない所を中トロなどと呼ぶ。

クロマグロはもともと量が少ない魚です。2019年度の統計で見ると、日本に供給された36万トンのマグロの内、クロマグロの割合は5.73万トンの20%弱である。その中の2.77万トンは海外からの輸入に頼っている。そして国内の養殖は1.96万トン。太平洋で漁獲したクロマグロは、たった0.75万トンです。マグロ全体で見れば、2%程度と超貴重であることがわかる。現在も大きく数字は変わっていない。

【クロマグロの主産地とその漁法/時期】
松前(一本釣り・定置網/8~11月)
恵山(延縄/8~12月)
戸井(延縄/8~12月)
大間(一本釣り・延縄/7~12月)
尻労(定置網/5~6月)
三厩(一本釣り・延縄/9~12月)
龍飛(一本釣り・延縄/9~12月)
小泊(延縄/9~12月)
岩崎(定置網/6~7月)
深浦(定置網/6~7月)
大船渡(一本釣り・定置網/5~7月)
気仙沼(一本釣り・定置網/5~7月)
塩釜(巻き網/5~7月)
佐渡(定置網/5~7月)
那智勝浦(延縄/2~6月)
油津(延縄/3~4月)
境港(巻き網/5~7月)
壱岐(一本釣り・延縄/11~2月)
沖縄(延縄/4~5月)

【クロマグロの基本データ】
分類:スズキ目サバ科マグロ属
学名:Thunnus orientalis (Temminck and Schlegel,1844)
地方名:東北地方、静岡県、富山県、熊本県、沖縄県でシビ、東京で若魚のことをマメジ、ヨコワ。和歌山県和深でマグロシビ、高知でハツ、マグロ、茨城県、千葉県、神奈川県でクロ、静岡県静浦では若魚から成魚になるにつれ、メジカッコ→メジカ→メジ→クロシビ→シビと名前が変わる。東京でもカキノタネ→小メジ→中メジ→大メジ→中マグロ→マグロと成長するにつれ、その呼び名を使い分ける場合もある。ちなみにヨコワとは体側に十数条の淡色の横帯があるためです。

ゴンダ(岩手県、宮城県)、オオクロ、トヨマ(富山県)、ハツ(関西)、オオシビ(福岡県)、ゴトウシビ(宮崎県)

ちなみに、豊洲市場などでは同じクロマグロとして扱っているタイセイヨウクロマグロの学名は、Thunnus thynnus (Linnaeus,1758)となります。

主産地

北海道 青森 和歌山 宮崎

名産地

大間 戸井 三厩 油津 噴火湾 佐渡 壱岐

秋~冬