【握り寿司: 巻き物】
カッパ巻きは、細切りまたは四つ割りにしたきゅうりを芯に、白ごまを振って巻く細巻きである。きゅうりが伝説上の生き物である河童の大好物とされることから、この名が付けられた。寿司業界では古くから、きゅうりを「カッパ」と呼ぶ符丁が用いられており、「カッパ巻き」の名も広く定着している。
店によっては、白ごまや刻んだ大葉を加えて巻き、風味をより引き立てることもある。また、花をつけた未熟で小さな「花丸胡瓜」を用いれば、一本をそのまま芯にできるため、見た目にも美しく仕上がる。きゅうりのシャキシャキとした歯触りと爽やかな味わいは、口の中をさっぱりとさせてくれるため、脂の多いすしネタを食べた後の口直しとしても親しまれている。
実は、カッパ巻きには誕生の経緯が伝えられている。現在のかっぱ巻きは、東京・西早稲田の八幡鮨四代目・安井弘によって考案されたとされる。戦後の食料難の中、日本ではGHQの統制により寿司ネタを自由に仕入れることが難しく、寿司そのものが貴重な食べ物となっていた。そこで安井は、定番の鉄火巻きやかんぴょう巻きに代わる新しい巻物として、生のきゅうりを巻くことを考案した。これが、後に「カッパ巻き」と呼ばれるようになった始まりである。
その後、この新しい巻物は各地の寿司店でも新しいネタとして取り入れられ、「カッパ巻き」の名で全国へ広まっていった。しかし、その誕生は流行を狙ったものではなく、戦後の厳しい時代に寿司店を存続させるための苦肉の策だったと伝えられている。こうして生まれたカッパ巻きは、今では鉄火巻きやかんぴょう巻きと並ぶ細巻きの定番として、多くの人に親しまれている。
(2026年7月25日加筆)