【握り寿司: 貝】
エゾアワビは、生でも蒸しても握り寿司の種として高く評価されている。生で提供する場合は身が硬いため、薄くそぎ切りにするのが基本で、刃打ちや波切りなどの丁寧な包丁仕事によってシャリとの一体感を生み出す。その繊細な仕事が引き出すのは、ほどよい歯ごたえと豊かな磯の風味が酢飯の酸味と見事に調和し、握り寿司として非常に完成度の高い一品となる。
一方、蒸したエゾアワビの握りは、生とは異なる魅力を持つ。加熱によって身は柔らかくなり、噛むほどに上品な甘みと凝縮された旨味が広がる。寿司店では、蒸しアワビを薄切りにして握り、煮詰めた煮汁や肝ソースを合わせることも少なくない。生の握りが心地よい歯ごたえと磯の香りを楽しむものであるのに対し、蒸しアワビの握りはふっくらとした食感と深いコクを堪能でき、それぞれに異なる魅力を味わうことができる。
また、生でも蒸しでも、濃厚な肝を添えて握ることで旨味はさらに深まる。
【エゾアワビの生態】
以前は単に鮑と言えば、黒鮑のことであったが、養殖により手軽な値段で買えるようになった蝦夷鮑が鮑全体の主流派になっている。蝦夷鮑は黒鮑の北方系の亜種で、本来は寒冷地だけにいたものが増殖や移植によって生息域が広がった。茨城県以北本州太平洋側、北海道日本海側、津軽海峡、朝鮮半島、中国河北省などの水深10メートルよりも浅場に生息しています。クロアワビよりやや小型で、殻が細長い。殻長は5年で10cmに達する。
エゾアワビは成長が早く、病気にも強いので、日本各地の海だけではなく、陸上でも養殖が行われている。韓国、中国でも養殖は盛んで、ハワイからも養殖物が入荷する。回転寿司の鮑といえばその多くが輸入物の代用品と蝦夷鮑である。
【エゾアワビの中毒】
春先になると中陽腺にクロロフィル誘導体が蓄積するため、食べると光過敏症になることがある。
【エゾアワビの基本データ】
分類:古腹足目ミミガイ科ミミガイ属
学名:Haliotis discus hannai Ino, 1952
地方名:アイベ
貝名の由来:蝦夷(北海道)に多いアワビの意味です。
(2026年6月18日加筆)
北海道 宮城 岩手
晩秋~冬