【握り寿司: 白身又は色物】
ブリは、太平洋側、日本海側ともに分布し、成魚・若魚を問わず季節によって広範囲を回遊する魚です。春から夏にかけては餌を求めながら北へ向かって移動し、秋から冬には水温の低下に伴って南下します。北上する群れも南下する群れも一年を通じて各地で漁獲されますが、特に冬のブリは、丸々と太りながらも適度に身が締まり、最も美味しい時期を迎えます。
ブリは成長に伴って呼び名が変わる代表的な出世魚です。地域によって呼び名や大きさの基準は多少異なりますが、関東では、全長約15~20cmを「ワカシ」、20~40cmを「イナダ」、40~60cmを「ワラサ」、60cm以上を「ブリ」と呼びます。なかでもイナダは夏に多く水揚げされ、ブリほど脂は多くありませんが、さっぱりとした味わいが特徴です。そのため暑い季節でも食欲が進み、酢飯の酸味ともよく合います。
かつて北海道ではブリはほとんど獲れない魚とされていましたが、近年は海水温の上昇により、北上する群れが増えています。北海道で水揚げされるブリの中には、「天上ブリ」と呼ばれるブランドブリもあります。天上ブリは、例年9月中旬から10月下旬にかけて、北海道積丹半島の余市と古平の定置網で漁獲されるブリです。寒ブリほど脂が強くないため、身の旨みと上品な脂のバランスに優れ、また酢飯との相性にも優れています。
富山湾で水揚げされる「氷見寒ブリ」は、全国的に知られる冬の味覚です。氷見沖の定置網で漁獲され、魚市場に出荷された体重6kg以上のブリのうち、氷見漁業協同組合の基準を満たして認証を受けたものが「氷見寒ブリ」です。寒ブリは、豊かな脂と濃厚な旨み、上品な甘みが特徴です。脂は口どけが良く、マグロのトロにも引けを取らない味わいがあります。特に腹身は脂の乗りが良く、柔らかな身質と程よい歯ごたえを楽しめます。
一方で、ブリは魚の中でも色変わりが早く、鮮度管理が難しい魚です。そのため、寿司ネタとして最高の状態で提供するには、適切な処理や熟成など職人の技術が求められます。
【ブリの生態】
ブリは、琉球列島を除く日本各地のほか、朝鮮半島東岸から東シナ海にかけての北西太平洋に分布します。幼魚は流れ藻の周辺で成長し、成魚は沿岸から沖合の海域を群れで回遊します。幼魚はモジャマと呼ばれ、流れ藻につく習性がある。
体は細長い紡錘形です。背側は青緑色、腹側は銀白色で、体側には吻から尾にかけて黄色い帯が入るのが特徴です。成魚は通常、全長60〜100cm程度、体重5〜10kg前後に成長します。
【ブリの仲間】
ブリ類(Seriola属)は、世界の熱帯から温帯にかけての沿岸海域に広く分布しています。
日本近海では、ブリ(Seriola quinqueradiata)が最も一般的な種類で、この種は北西太平洋の固有種であり、北太平洋以外には分布していません。
ヒラマサ(Seriola aureovittata)は、太平洋と大西洋の東西両岸に分布しています。日本周辺のヒラマサは、従来 Seriola lalandi とされていましたが、近年の遺伝子解析により地域ごとに別種へ分類され、日本周辺の個体は S. aureovittata とされています。
カンパチ(Seriola dumerili)は、太平洋と大西洋の東西両岸に加え、インド洋や地中海にも広く分布しています。
ヒレナガカンパチ(Seriola rivoliana)は、太平洋と大西洋の東西両岸および地中海に分布しています。一方、インド洋に生息する「Songoro amberjack」も現在は同種とみなされていますが、将来、インド太平洋の個体群と大西洋・地中海の個体群が別種と判断された場合には、インド洋の個体群には Seriola songoro Smith, 1959 の学名が適用される可能性があります。
日本近海には分布しないブリ類としては、Banded rudderfish(Seriola zonata)が大西洋の東西両岸、Lesser amberjack(Seriola fasciata)が大西洋西岸に分布しています。また、California yellowtail(Seriola dorsalis)は北米太平洋沿岸に生息しています。オーストラリア周辺には、California yellowtailと同種と考えられているYellowtail kingfish(Kingfish)が分布しているほか、Samsonfish(Seriola hippos)も生息しています。なお、これらの魚には一般的に認められた和名はありません。
【ハマチのえぐみと取る方法】
養殖魚には、脂っぽさの他に嫌な渋みやえぐみが感じられるときがある。次の方法で取るとよい。まず、養殖活魚を活け締めして3枚におろし、おろした身の皮目を上にしてまな板に置き、さらし布巾又はガーゼをかぶせる。次に、この布巾の上から粗塩をたっぷりとまぶし、手のひらで皮目をこするようにする。塩でもみ込むような要領だ。そのままの状態で10分ほど置いたら、布巾ごと塩を除き、氷水に漬ける。ただし、死後硬直前にしなければ効果がない。皮目に塩をするので、身に塩が回って身がしまりすぎることもなく、皮の近くにある渋みやえぐみが取れる。
【トレビア】
鯛と並んで祝儀魚とされ、尾や鰭を板壁などに貼って残しておき、熨斗の代わりにしていた風習が日本各地に残っている。
【出世魚の地方名】
ツバル→ハマチ→メジロ→ブリ(大阪)
モジッコ→ハマチ→ブリ→オオイナ(高知)
ツバエソ→フクラギ→ブリ・ニマイズル→ブリ又はサンカ(富山)
ツバイソ→コズクラ→フクラギ→ガンド→ニマイズル→ハマチ→コブリ→ブリ→アオブリ→オオブリ(能登)
【ブリの目利き】
体側の黄色の線がはっきりしていて、体がかたくしまり、尾びれに張りがあるものがいい。そして眼の澄んだ光沢のあるものは鮮度がいい。切り身は血合肉が鮮明なのがよい。天然物は背の方の赤身が強く、養殖物は白色が強い。養殖物と天然物の見分け方は、尾の形です。養殖物は尾の半月形のカーブが天然物に比べて緩くなっています。
【養殖ブリについて】
近年ではブリ養殖が盛んになり、市場に流通するブリの多くを養殖物が占めています。関東では、天然ブリと区別するために養殖物を「はまち」と呼ぶこともあります。これは、もともと関西で養殖され、ハマチサイズになった魚が関東方面へ出荷され、その呼び名が広まったことが由来です。
一般的に養殖ブリは、天然魚と比べて運動量が少ない環境で育つため、脂が多く柔らかな身質になる傾向があります。しかし、玄界灘では、潮の流れが速い沖合の広い生け簀を利用し、十分な運動量を確保することで、身の締まった養殖ブリが育てられています。これらは「トロブリ」と呼ばれ、脂の乗りが良く、適度な歯ごたえを備えた養殖ブリとして評価されています。
【ブランド養殖ブリ】
鹿児島県長島・東町:鰤王
長崎県:健康ハマチ
愛媛県宇和島:戸島一番ブリ
香川県庵治町・牟礼町・さぬき市など:オリーブハマチ
香川県引田(ハマチ養殖の発祥の地):ひけた鰤
香川県備讃瀬戸の海域:なおしまハマチ
【ブリとワインのペアリング】
辛口のロゼ
【ブリの漁法】
定置網、釣り(手釣り、竿釣り、立縄釣り、延縄、曳縄、かっぽり釣り、電気釣り)、刺網(流網、まき刺網)、飼付漁など
【ブリの基本データ】
分類:スズキ目アジ科ブリ属
学名:Seriola Quinqueradiata Temminck and Schlegel,1845
地方名:モジッコ(幼魚:和歌山県、高知県)、タンゴブリ(茨城県)、アオブリ(富山県)、アカンボ(和歌山県、長崎県、鹿児島県)、スベリ(鳥取県)、アオイオ(高知県)、テンコツ(鹿児島県)、フクラゲ(若魚:日本海側)、シヨノコ(岩手県)、シヨウノコ、ニウドウ、バチ(新潟県)、サンバク(茨城県久慈)、ガンドウ(富山県、石川県)ニマイズリ、オフクラギ(石川県)、ハナマガリ(京都府丹後)、マルコ(鳥取県)、テンコ(島根県壱岐)、スズイオ(高知県)、ヤズゴ(福岡県)、ヤガラ(長崎県)、アカバニソジ(沖縄県)
魚名の由来:年をとった魚を表す「経魚(ふりうお)」から転じてブリとなったとされる。またブリはアブラが多いことから、アが抜けてラがリに訛ったとする説などがある。
栄養成分:脂質含有量17.6g
(2026年8月4日加筆)