【握り寿司: 白身】マナガツオは北海道から南の日本海、太平洋、瀬戸内海や有明海など日本の近海から東シナ海、南シナ海、インド洋に至る広い海域に分布する。水深200m前後の大陸棚の砂泥底や、沿岸から遠くない表層を群れで回遊しながらクラゲやオキアミなどの甲殻類やプランクトンなどを捕食する。
マナガツオという名から、カツオの仲間と思うかもしれませんが、まったく違い、イボダイの仲間です。その名は瀬戸内海ではカツオが獲れなかったため、本種をカツオと呼んでいた。それでカツオをまねた「真似鰹」から転訛したそうです。また「関西に鮭はいない。関東には真名鰹いない」などとも言われ、関東ではさっぱり縁の無い魚ですが、中部以西、特に関西方面では料亭や割烹などでもよく使われる高級魚です。フランス料理や中華料理でも使うので、さまざまな料理人に馴染みがあります。
マナガツオは体に箔を押したような光沢のあるものがあり、この刺身は極上の旨さですが、これは新鮮な物が手に入る関西での話です。白身でクセがなくやわらかで、脂肪も少なくあっさりとした味 で、刺身もさることながら白みそで漬ける「西京漬け」は逸品だ。またマナガツオは他の魚と比べて冷凍しても味の落ちない魚なので、新鮮なうちに冷凍することができる。
マナガツオは水分が100g当り70.8gと、柔らかい魚の代表であるサワラより多い。これは昔であれば、握り寿司にはまったく向かない魚です。その上、鮮度の良いのは関東では入手が難しいので、江戸前寿司店ではほぼ扱っていないネタです。でも塩締めにして、水分をコントロールできた時のマナガツオは、寿司飯に絶妙にマッチします。いずれにしても珍しいすしネタですので、見つければ是非食べてみたい。
【マナガツオをおろすときのポイント】
何と言っても味噌漬けにするのがマナガツオの美味しさを堪能できる。通常は平べったく幅のある魚は五枚におろすが味噌漬け用としてはそれでは身がせせこましくなってしまい見栄えがよくないので、三枚おろしが基本である。骨が大変柔らかい魚で、身を中骨から外すとき、骨まで包丁が入ってしまいやすいので注意が必要である。またすべてが柔らかい魚なのに、皮だけは厚い。味噌漬けにするときは皮に細かく1~2mm間隔の切れ目を丁寧に入れること。そうしないと味が浸み込まず、皮をとってしまうと美味しくならない。新鮮なものは刺身として味わう。この場合五枚おろしにする。
【トレビア】
刺身や西京焼きにすると絶品と言われているが、江戸時代の百科事典「和漢三才図会」にも「さしみにすると最もよい」と記されている。
【マナガツオの目利き】
鮮度のよいものは銀のウロコと腹部のピンク色が美しい。ウロコははがれやすいので、鮮度判定の目安となる。関西ではウロコがはがれないように、一匹ずつ丁寧に紙で包んである。2kg前後の物が最も旨い。
【マナガツオの漁法】
刺網、曳網、定置網、建縄など
【マナガツオの基本データ】
分類:スズキ目マナガツオ科マナガツオ属
学名:Pampus punctatissimus (Temminck & Schlegel,1845)
地方名:マナ(関西)、ギンダイ(富山県魚津/東岩瀬)、チョウチョウ(紀州)、ケイフク、チョウチン/メンナ(岡山県)、マハ(下関)、カツオ(広島県)、マナガタ(長崎県、熊本県)、フーイチャー(沖縄県)
名前の由来:前述の通り。
栄養成分:100gのカロリー154kcal。