【握り寿司: 貝】赤貝という名前の通り、殻の中の身やヒモは、鮮やかな赤みのかかったオレンジ色だ。これは海産物には珍しく、体内にヘモグロビンを含む血液があるからだ。赤貝は北海道から九州で、内湾の水深10mほどの浅い砂泥底に潜って生息する。貝殻には42本前後の深い溝があり、剛毛で覆われている。
大振りで肉厚のあるものが上物。仕込み直前まで殻から外さず、生かしておくことが大切です。握る直前にまな板に叩きつけるのは、まだ生きている柔らかい身に硬い歯ごたえを出すため、締めている。また身に蝶を思わせるような飾り包丁を入れるのは、食べやすくするためでもあるが、すでに死んでいるものでは、切り口の身が盛り上がらず見栄えが悪いものになる。貝柱の付いたヒモも、味わいや歯応えがよく捨てがたく、こちらを好む人も多い。いずれも握る直前にさっと酢に通すことで、仕込みの後に出た臭みが取れる。一方、すきやばし次郎では、赤貝の風味を消さぬように、生のまま握っている。
昔は江戸前でもたくさん獲れ、千葉県検見川(けみがわ)産が最上とされ珍重された。つやのある鮮やかな色合いは鮮度の良さを物語る。口いっぱいに広がる潮の香りと歯ごたえの良さを楽しむネタだ。
ちなみに外観も身も赤貝に似ているサトウガイがいる。赤貝は内湾に棲息しているが、サトウガイは外洋に棲み、比較的殻が厚いという違いがある。そのため、豊洲市場ではサトウガイは「シロダマ」、赤貝は「ホンダマ」と区別して呼ばれる。
【アカガイの目利き】
当たり前だが、活きているものは触ると、殻をしっかり閉じる。殻が薄く、持ってみて重い感じがするものは良品である。むき身は色の濃いっもの、身が盛り上がっているものが新鮮である。
【アカガイの漁法】
貝桁網(底引網の一種)
【アカガイの基本データ】
分類:フネガイ目フネガイ科リュウキュウサルボウ属
学名:Scapharca broughtonii (Schrenck,1867)
地方名:ホンダマ(関東)、ホンアカ、アカダマ、バクダン、キサガイ(山形県)
由来:身肉が赤いことからついた。