【握り寿司: 白身】コチと一般に言われるが正確には、マゴチ(真鯒)という。暖水性の魚で、太平洋側では房総以南、日本海側では新潟以南に分布し、主に水深20~30mの砂泥地に生息している。目が小さく、下顎の先端に丸みがある。胸鰭の裏側が白っぽいのも特徴だ。マゴチは雄から雌へ性転換する魚で、大型のものはすべて雌である。
大型の物は1mほどになるというが、市場で見かけるのは、全長50cmくらいまでのものが多い。一般に大型のものがよいとされるが、重要なのは太り具合だ。痩せた物は味が劣るので、身がまるまると太ったものを選びたい。
夏を代表する白身の高級魚です。寿司タネとして使われるようになったのは最近のことだ。「夏のフグ」と称され、薄造りにして握る。5~8月頃に出回る鱸やホシガレイとは違い、コリコリとした歯ごたえが魅力で、かつさっぱりとした味わいは夏向きのネタだ。
ただし、コチはすし職人泣かせのネタの一つだ。頭が大きくて、寿司ネタになる部分が少ない。そして仕込み時、数多い小骨を1本ずつ丁寧に抜かなければならい。身が硬めなので、熟成させる必要があり、その加減に気を使う。つまり手間のかかるネタということだ。
【トレビア】
江戸時代の書物「魚鑑」にも、コチは江戸に多く、コイ、スズキに次いで酒の肴の逸品と記されている。
【コチの目利き】
押すと弾力があり、体表に光沢があるものは、新鮮です。鮮度が落ちてくると、腹が柔らかくなる。背の黒い部分と腹の白い部分の境目がはっきりしているものは、美味しい。
【コチの漁法】
釣り、延縄、刺網、定置網、底曳網など
【コチの基本データ】
分類:カサゴ目コチ科コチ属
学名:Platycephalus sp.2
地方名:ホンコチ、ヨゴチ(富山県)、イソゴチ(紀州)、ガラコチ、ガラゴチェイ(瀬戸内海)、ゼニゴチ(長崎県)、クロゴチ(岡山県)、スゴチ(愛知県)、ホンゴチ、シロゴチ(豊前)、シラコチ(兵庫県明石)、ムギメ(四国)、クチヌイユ(沖縄)
魚名の由来:正装の際に使った、細長い木の板「笏(こつ)」に似ていることから、その名が付いたようだ。