【握り寿司: 貝】
トリ貝の旬が終わる頃、梅雨明けから初夏にかけて市場に出回り始め、夏の終わりには姿を消す石垣貝。その出荷期間は短く、主な産地も限られているため、高値で取引されることが多い。近年では、トリ貝に代わる夏の貝種として寿司店で使われる機会が増え、この時期になると石垣貝の握り寿司を見かけるようになる。豊洲市場では1個あたり約300〜700円で取引されている。天然物はほとんど流通しない希少品で、入荷した際には養殖物の約2倍の価格になることもある。
石垣貝はトリ貝の仲間で、シャキッとした歯切れの良い食感が魅力である。グリシンやアルギニンなどの遊離アミノ酸を含み、強い甘味と旨味を感じられるのが特徴である。また生命力が強く、殻から外した後も2〜3日ほど生きるほど鮮度を保ちやすい貝でもある。寿司職人の中には、提供直前に手のひらで軽く叩いて身に刺激を与えることで、石垣貝特有の張りや弾力を引き出す工夫をする者もいる。これは、新鮮な貝が持つ食感の魅力を最大限に活かすための技法である。
石垣貝は、生のまま握るほか、軽く湯引きしてから寿司に仕立てることもある。生では、石垣貝ならではの爽やかな香りと、みずみずしさ、歯切れの良い食感を存分に味わえる。一方、湯引きすると表面がほどよく締まり、適度な弾力が生まれるとともに、甘味や旨味がより引き立つ。生とは異なる、穏やかな風味としなやかな口当たりを楽しめるのが特徴である。
【イシガキガイの生態】
石垣貝は鹿島灘以北の日本沿岸、北海道、千島列島からアリューシャン列島、さらに北米西海岸まで広く分布する二枚貝です。水深約50mまでの浅い砂泥底に生息し、海中のプランクトンをろ過して食べています。殻長は一般的に8~12cmほど、大きなものでは15cm近くまで成長します。殻は厚く丸みを帯び、放射状の肋が発達しており、殻表は灰白色から黄褐色で、黒褐色のまだら模様が現れることが多く、この模様が石垣のように見えることから「石垣貝」と呼ばれています。
この貝は岩手県広田湾で養殖が成功して、2008年頃より築地市場に出回るようになり、石垣貝として流通するようになった。仲買人によると、築地市場の関係者が「石影」を「石垣」と聞き間違えたことで市場ではこう呼ばれているとのことです。見た目が黒いトリ貝に対して、白っぽい身肉から白トリ貝とも呼ばれる。正式名称は、蝦夷石影貝 (蝦夷石陰貝:エゾイシカゲガイ)です。
【イシガキガイの基本データ】
分類:マルスダレガイ目ザルガイ科イシカゲガイ属
学名:Keenocardium californiense (Deshayes, 1839)
地方名:イシガケガイ、イシガキガイ
貝名の由来: 前述の通り。
(2026年7月22日加筆)