【握り寿司: 白身】甘鯛は関西では「ぐじ」と呼ばれて、京料理には欠かせない食材の一つです。甘鯛には、アカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの種類がり、白が一番浅い、赤がこれに次ぎ、キアマは深い所に住んでいる。白身の貴婦人と呼ばれ、旬を迎えた身は脂がのって、ほのかな甘さがじわりと浸み出す一品だ。市場に出回るアカアマダイ、シロアマダイ、キアマダイの中で身に水分の少なく、脂が乗っている白甘鯛がすしネタに向く。東京では、白甘鯛をシラカワ(白い皮の意味)と呼ぶ。寿司屋では赤甘鯛を、短く甘鯛と呼ぶ。
甘鯛は、魚の中でも水分が多く、余分な水分を抜いて旨みを凝縮する下処理が大事です。塩を振って、30分~1時間ぐらいおき、出てきた水分と塩を洗い流してから使う。水分を抜いた甘鯛は、旨みや甘みが明確になり、かつねっとりした食感とともに寿司ネタにもってこいの状態になる。このまま握ってもいいですが、皮の下の脂が美味しい魚ですので、湯引きしたり、皮目を炙ったりするのもよい。店によってはさらに昆布締めにする。
【甘鯛の目利き】
小型のものは脂肪分が少なく、味が落ちるので、1kg以上のものを選ぶこと。体色が鮮やかで腹がしっかりし、うろこの付いたものが新鮮です。
【甘鯛の種類】
赤甘鯛:本州中部から東シナ海、済州島、南シナ海の水深30~150mの砂泥底に生息している。全長は45cmになる。産卵期は6月~11月。産卵は岸に近い70~100mの海底で行われる。旬は冬。赤甘鯛は最も多く流通している甘鯛です。
白甘鯛:本州中部から東シナ海、釜山、南シナ海、フィリピンの水深30~100mの砂泥底に生息している。体は全体的に白っぽい。全長60cmになる。旬は冬。
黄甘鯛:本州中部から東シナ海の水深30~300mの砂泥底に生息している。名前の通り、背びれや尾びれが黄色っぽい。全長は35cmになる。旬は冬。豊洲市場で稀に見かけることがあるが、すしネタにはほとんど使われることはない。全国的に水揚げ量は少ないが、錦江湾では、黄甘鯛の方が赤甘鯛よりやや多いそうだ。味噌漬けの他、昆布締めや開いて一夜干しなどにする。
黄甘鯛の一夜干しは、興津鯛と言う。一般に黄甘鯛は水っぽく味が落ちると言われるが、一夜干しにした興津鯛は美味で知られる。静岡県の興津で一夜干しにすることから、この名がある。
学名:Branchiostegus auratus (Kishinouye,1907)
【甘鯛の栄養と効能】
骨や歯を丈夫にするカルシウムが豊富。高血圧を予防するカリウム、筋肉の働きを正常に保つマグネシウムも多め。食べると脂が相当多いように感じるが、それほど多いわけではなく、多価不飽和脂肪酸やコレステロールも少ない。
【甘鯛の代用魚(偽装魚)】
キングキリップの原産地は南アフリカ沖です。体長1.5mに達し、水深500mまでの海底に生息する。甘鯛とはまったく違う外観だが、脂肪分が少ないあっさりと美味しい白身と言う点では、甘鯛になり得る。アルゼンチン、チリなどでは非常に人気の食用魚です。日本では塩焼きや蒸し焼きが美味しい甘鯛に対し、フライやムニエルなどの洋食に使われることが多い。回転寿司などでは、「炙り甘鯛」や「昆布締め甘鯛」として提供されていた時期があった。
【アカアマダイの漁法】
底延縄、底曳網、一本釣りなど
【アマダイの基本データ】
分類:スズキ目キツネアマダイ科アマダイ属
学名:Branchiostegus japonicus (Houttuyn,1782)
地方名:グシ、グジ(京都府、和歌山県)、グジダイ(富山県、石川県、福井県)、クズナ(大阪府、福岡県、島根県)、アカッペ、イヅキン/イッキン(沖縄県)、ビタ/アカビタ(高知県)、アカクジナ(長崎県、鹿児島県)、アカクジダイ(日本海側)、ブドウサン(紀州)、オキツダイ(駿河)、コビル(鳥取県、島根県)
魚名の由来:甘みのある魚が語源である。