【握り寿司: 光り物】一般にキスと言えば、シロギスを指し、古くから寿司ネタとして愛されてきた。軽く昆布締めすることで、瑞々しく上品な旨味が口の中に広がり、シャリとのバランスが素晴らしいネタだ。春頃から出回り始め、夏の「上ダネ」として寿司通には人気が高い。
キスは小型で身が薄いので、昆布締めにする時には肉薄の昆布を使用する。厚い昆布にすると、キスから水分を吸い過ぎてしまう。また昆布の香りが勝ってしまうことを避けるため、身の方だけに昆布を当てる場合もある。
オーストラリアからは、近縁種のアメギスなどが輸入されているが、やや体色が濃く、美しさでは劣るので、寿司屋では如何なものか。昔、東京湾でさかんに行われていた「脚立釣り」で釣っていたのも、アオギスである。残念ながらシロギスより味は劣る。
【トレビア】
江戸時代の地誌「江戸名所図会」でも、武士や町人が中川で競ってキス釣りをする様子が記されており、古くから釣り人の間で、人気の魚だったことがうかがえる。
【キスの目利き】
体色の銀色模様がはっきり出ているもの、水晶体が澄んでいて、黒目がはっきりしているもの、腹に透明感があり、張りのあるものは、鮮度がいい。鮮度が落ちるとウロコがはがれる。シロギスは15cmくらいが最も旨い。
【キスの栄養と効能】
身肉のタンパク質を構成しているアミノ酸には、リジン、グルタミン酸が多いので甘味があります。仕込みをし、客に提供するまでの間に熟成すると鱚の旨さが生じ、それが酢の酸味とよく合う。
【シロギスの漁法】
定置網、刺網(狩指網、こぎ刺網、流刺網、まき刺網)
【キスの基本データ】
分類:スズキ目キス科キス属
学名:Sillago japonica Temminck and Schlegel,1844
地方名:マギス、シラギス(東京)、キスゴ(四国、九州)、キツゴ(長崎県)、コズノ(播磨)、カハキ(摂津)、カワギス(鹿児島県)、キスコ(八郎潟)、アカ、アカギス(徳島県)
魚の名の由来:淡泊なことから混じりけのない意味の「生(き)」と飾り気のない意味の「直(す)」から「きす」となったとする説が有力です。