エビ・カニ

頭矮蟹の握り寿司の画像
頭矮蟹の握り

頭矮蟹の握り

【握り寿司: エビ・カニ】
元来、ズワイガニは江戸前寿司の伝統的なネタではないため、現在でもかたくなに握らない老舗寿司店は少なくない。すしに使われるのは主に雄の脚の身で、肉質はしなやかで歯切れがよく、噛むほどにカニ特有の上品な甘みが広がる。店によっては、濃厚なカニミソをのせて握ることもある。

一方、雌のズワイガニは、身だけでなく内子や外子も味わえるのが魅力だ。外子はプチプチとした独特の食感が楽しめ、内子は濃厚でコクのある味わいが特徴である。さらに、カニ身に内子と外子を混ぜ合わせ、おはぎのような形に仕立てた握りを提供する店もある。

ただし、ズワイガニを寿司ネタとして積極的に取り入れている寿司店は、決して多くないのが現状だ。カニやうなぎ、フグには、それぞれの調理を専門とする職人が存在する。私個人としては、寿司にするよりも、専門店で素材に合った調理法で味わうほうが、美味しさを感じやすいのだとに思う。あくまで私見ではあるが。

近年は、ロシアやカナダなどからの輸入量が増えていることもあり、外食産業ではズワイガニが比較的積極的に使われるようになっている。また、回転寿司などでは、見た目がよく似たベニズワイガニが代用されることもある。ベニズワイガニはズワイガニよりやや甘みが強いとされる一方、身質がかなり水っぽいため、握り寿司のネタとしては必ずしも適しているとはいえない。

そもそも、カニを好む日本人の旺盛な需要を、日本近海で漁獲されるズワイガニだけで満たすことはできない。そのため現在では、ロシアやカナダ東海岸、アラスカなどから大量のズワイガニが日本へ輸入されている(その現状については下記)。

なかでも大産地の一つとして知られるアラスカ州は、資源保護を目的とした厳格な漁業管理で知られている。サイズ規制が設けられており、小型の個体は漁獲せず海へ戻すことが義務付けられている。そのため、アラスカ産のズワイガニは、一般に大型で身が詰まっているという評価を受けている。また、日本では珍重される雌ガニについても、捕獲しても資源保護のため海へ戻すことが定められている。

【アラスカとカナダのズワイガニの実態】
とても衝撃的な出来事だったのが、アラスカ州沖のベーリング海で行われていたズワイガニ漁は、2022年に史上初めて中止された。中止の理由は、アラスカ州魚類野生生物局(ADF&G)によると、ズワイガニの個体数が2018年の約80億匹から、2021年には約10億匹へと激減したためだ。

その後も資源の回復は見られず、ズワイガニ漁は2023年も引き続き中止された。NOAA Fisheriesによると、2018年から2021年にかけて、ベーリング海では100億匹を超えるズワイガニが姿を消したと推定されている。その背景には、2019年を中心とした大規模な海洋熱波や海水温の上昇があり、ズワイガニが生息する冷たい海域が縮小したことなどが影響したと考えられている。つまり、単純に漁業による獲りすぎだけが原因だったわけではなく、海洋環境そのものが大きく変化したことが、資源の急減につながったとみられている。

しかし、2年間にわたる禁漁を経て、2024年にはわずかながら明るい兆しが見え始めた。アラスカ州魚類野生生物局は2024~2025年漁期のズワイガニ漁を再開することを決定したのである。ただし、漁獲枠は4約2,140トンにとどまった。これは、禁漁前の2020~2021年漁期に設定されていた約2万400トンのわずか1割程度である。そのため、漁が再開されたとはいっても、資源が元の水準まで回復したことを意味するものではなかった。

さらに2025年の調査では、小型のズワイガニが比較的多く確認され、将来的な資源回復につながる可能性が示された。これを受けて、2025~2026年漁期の漁獲枠は約4,220トンへと引き上げられ、前年の472万ポンドからほぼ2倍に増えた。

ただし、この漁獲枠の増加は、ズワイガニの資源量そのものが単純に2倍になったことを意味するわけではない。2025年の調査では、ズワイガニと近縁のタナークラブとの交雑個体が異例の多さで確認され、それも漁獲枠の設定に考慮されたためである。そのため、「ズワイガニが急速に以前の状態まで回復した」と判断するのは早い。

2026年現在、NOAA Fisheriesはアラスカのズワイガニ資源を依然として「乱獲状態(overfished)」と評価している。一方で、現在は「過剰な漁獲(overfishing)」の状態にはないとされており、資源は回復・再建の途上にある。NOAAでは、ズワイガニ資源を目標水準まで回復させるための再建計画を進めており、2029年を一つの目標としている。

つまり、2022年に突然姿を消したかのように見えたアラスカのズワイガニは、現在になって少しずつ回復の兆しを見せ始めている。しかし、漁獲が再開されたからといって問題が解決したわけではない。かつての豊富な資源量にはまだ遠く、海水温の上昇などによってベーリング海の生態系が変化し続けていることを考えると、今後も慎重な資源管理が必要とされている。

一方、カナダではアラスカとは異なり、ズワイガニ漁が現在も大規模に続いている。特にニューファンドランド・ラブラドール州ではズワイガニ漁が重要な産業となっており、2026年の総漁獲可能量(TAC)は約6万1,000トンに設定された。これは前年より3%少ないものの、過去3番目に高い水準である。この数字だけを見ると、カナダのズワイガニ資源は順調に見える。

しかし、実際には地域によって状況が大きく異なる。2026年には、ラブラドール地方の一部の海域で漁獲枠が前年より約20%減少したほか、ニューファンドランド島の北東部では約18%、南部・南西部では約30%も減少した。つまり、州全体では高い水準の漁獲が維持されているものの、その一方で、資源が減少している海域も存在するのである。

さらに、海水温の上昇によってズワイガニが生息しやすい海域そのものが変化していることも指摘されている。そのため、カナダでは現在も大規模な漁業が行われているものの、将来にわたって安定した漁獲が保証されているわけではない。アラスカでは資源の急減によって一時的に漁業そのものが停止する事態にまで至ったが、カナダでも地域によっては資源の減少が進んでおり、今後の海洋環境の変化を見ながら慎重に資源を管理していく必要がある。

【ズワイガニの生態】
ズワイガニは、日本海から北海道、オホーツク海、アラスカまで分布している。水深40~600mの泥底に生息し、漁場の水深は180~360mで、特に200mの等深線に沿った水温1~3℃の海底に暮らす。漁期は11月から翌年3月まで。オスは甲羅の幅が約15cm、メスは7~8cmです。

【オスのズワイガニの呼び名】
地方によって呼び名が異なり、オスは松葉ガニ (兵庫・鳥取)や越前ガニ (兵庫・鳥取)、加納ガニ (石川)、間人ガニ(京丹後)と呼ばれる。それぞれ漁期と品質をきちんと守り、脚にタグを付け、管理・販売されている。

【メスのズワイガニの呼び名】
セコガニは、卵を持っているメスのズワイガニの呼び名で、主に福井県や兵庫県、鳥取県などで使われる。コッペガニも、卵を持っているメスのズワイガニの呼び名で、京都の丹後地方のみで使われる。香箱ガニも、セコガニやコッペガニと同じく、卵を持ったメスのズワイガニの呼び方で、北陸地方、おもに金沢で聞かれる呼び名です。

【ズワイガニの旨み成分】
ズワイガニには、グリシンやアラニン、アルギニン、グルタミン酸などの遊離アミノ酸が含まれている。グリシンやアラニンは甘味を、グルタミン酸はうま味を、アルギニンは苦味を呈するアミノ酸である。これらに加えて、イノシン酸などの核酸関連物質や無機塩類も味に関与しており、さまざまな成分が組み合わさることで、ズワイガニ特有の複雑で豊かな味わいが生まれる。

【ズワイガニのコース料理】
日本では、ズワイガニをコース料理として食べるのが一般的です。これには、塩茹で、蒸しガニ、刺身、焼きガニ、鍋料理、蟹ご飯など、様々な調理法が含まれます。さらに、カニ味噌は殻ごと茹でたり焼いたりして食べられます。これは珍味であり、冬になるとこれを目当てに日本海沿岸を訪れる人もいるほどです。

【ズワイガニのトリビア】
甲羅に付着している黒い粒は、カニビルが産みつけた卵です。カニビルとは、名前の通りヒルの一種で、魚に付着して体液を吸う。カニについているのは、カニの体液を吸うためではなく、岩場の代わりに甲羅を卵の産卵場所として選んでいるだけです。カニビル自体は茹でたり、冷凍したりすれば死んでしまう。そしてカニビルの卵が多いというのは、脱皮してからの時間が長いため、カニが美味しい証と言われる。

【ズワイガニの目利き】
爪や脚が揃っていて、持った時重いのがよい。

【ズワイガニの漁法】
底曳網、ズワイかご漁など

【ズワイガニの基本データ】
分類:十脚目ケセンガニ科ズワイガニ属
学名:Chionoecetes opilio (O. Fabricius,1788)
地方名:マツバガニ/コウバガニ(雌)(鳥取)、エチゼンガニ(福井県、石川県)、ヨシガニ、セイコ、アカコ、クロコ、ゼンマル、フタヨガニ、ワタガニ、モサガニ、セイコガニ(雌)、タラバガニ(山形県)、
由来:「ずわい」は、細くまっすぐな小枝を表す「楚(すわえ)」が変化したとされる。

(2026年9月4日加筆)

主産地

兵庫 鳥取 石川 福井

名産地

福井(越前ガニ) 石川(加能ガニ) 鳥取(松葉ガニ)