【握り寿司: 貝】栄螺は北海道の北部、沖縄を除いた日本各地の潮間帯から水深約10mまでの岩礁に生息している。最大の殻高は、10cmに達する。貝殻は円錐形で厚みがあり、周縁には棘がある。棘の数や長さは生息環境や個体による変異が大きい。雄の生殖腺は黄白色で、雌のは緑色をしている。夏の栄螺は産卵で身がやせるとも言われているので、冬から春が旬となる。学名は、Turbo sazae Fukuda, 2017です。
昔は荒磯で育った栄螺には立派な棘が発達し、一種のスパイクのように岩に棘が引っかかり、流されにくくするために発達したのではないかと言われていた。まったく棘を生じない個体を丸腰や角なしと呼ぶ。特に若くて小型で、かつ棘のないものは、市場では、姫サザエなどと言う。ただし、棘がなく全体的にまるみを帯びている物は、輸入物の場合がある。
栄螺は、なかなか生きた状態で見ることは少ないが、軽く振ってみて音がしないものや触れると素早く蓋を閉めるものが新鮮だ。夏場は生きていても中の水が濁っている場合があり、匂いを嗅いで新鮮さを判断する。栄螺は重さ300g以上のものが美味しい。栄螺の主食は、海藻類で、食べる海藻の質により味や殻の色が変わる。アラメを食べると殻が白色がかり、テングサを食べると黒褐色になると言われている。
栄螺は身が固くシャリとの馴染みが悪く、見た目にも不格好だ。おまけに強烈な磯の香りと濃い旨みが主張するため、握り寿司としての一体感がなくなってしまう。ただ、野趣あふれる風味と旨みがたまらないと好んで食べる人もいる。握りにする時は食べやすいように内側に細かめに隠し包丁を入れておくとよい。新鮮な肝はさっと茹でて上にトッピングすると、心地のより苦味と濃厚なコクを感じる。だた日本人には焦げた醤油やサザエの磯の香りがたまらないサザエのつぼ焼きの方が好きかもしれない。
【栄螺の基本データ】
分類:綱古腹足目サザエ科リュウテンサザエ属
学名:Turbo (Batillus) sazae H.Fukuda, 2017
地方名:サデ(千葉県夷隅郡、長崎県壱岐・長崎市)、サダエ(茨城県日立市、千葉県夷隅郡、山口県、長崎県島原半島)、サザイガイ、サタベ
由来:殻を小さい家に見立てた「ささ」(小さいの意)「え(い)」(家の意)の意味であるとされる。
夏