【握り寿司: イカ・タコ】
アオリイカは、透明感のある美しい身を持ち、柔らかな肉質でありながら程よい弾力を備えている。味わいは上品で、さらりとした甘みが特徴だ。この甘みは、グリシン、アラニン、プロリンなどの遊離アミノ酸を比較的豊富に含むことに加え、筋肉中に蓄えられたグリコーゲンの死後代謝が甘みやコクの形成に関与すると考えられている。
アオリイカは漁獲量が少なく、寿司ネタとして用いられるイカ類の中でも最高級品とされる。そのため、豊洲市場などでは一般的に1kgあたり2,000~3,000円程度で取引され、大型個体では1杯10,000円を超えることも珍しくない。
活け締めした後、半日から1日半ほど熟成させることで甘みと旨味が増すとされ、寿司ネタとしては2kg前後の個体が最良とされる。見た目以上に身がしっかりしているため、寿司職人は隠し包丁を入れて繊維を断ち、食べやすさと甘みを引き出す。握りでは塩とすだちで供されることが多く、その繊細な甘みを存分に味わうことができる。また、硬めのゲソは炙ってつまみにしたり、煮ツメを塗って提供したりすることもある。
春から晩秋にかけて出回るが、特に夏に旬を迎える。一般のスーパーで見かける機会は少なく、その多くは寿司店や高級割烹へ向かう。その繊細な甘みと食感を堪能できるアオリイカは、ぜひ味わいたい高級寿司ネタの一つである。
余談ではあるが、アオリイカは他のイカに比べて強いねっとりとした食感を持つため、その特徴を好まない寿司職人の中には握りには用いない者もいる。しかし、その味わい自体は高く評価されており、刺身などの形で提供されることは少なくない。
【アオリイカの生態】
障泥烏賊(アオリイカ)は、北海道南部以南、インド洋、西大西洋の温帯や熱帯の沿岸から近海に分布する。胴長は35cm以上になる。エンペラ(ひれ)が胴の全長に及ぶ点はコウイカ類に似るが、コウイカ類特有の石灰質の甲を持たない。4~6月ごろ、産卵のため岸近くの藻場に来遊する。「ばしょういか」、「みずいか」など多くの地方名がある。
生きているアオリイカは黒い色から透明まで体色の濃淡を変えますが、活け締めにすることにより、暫く身は生きた状態、すなわち無色透明となり内臓が透けて見える。締めずに死んだ物や、氷に当てられて死んだ物は、身が白く変化し、内臓が透けて見えることはありません。
【アオリイカの漁法】
いかしば漁など
【アオリイカの基本データ】
分類:ツツイカ目ヤリイカ科アオリイカ属
学名:Sepioteuthis lessoniana Férussac in Lesson,1832
地方名:クツイカ(富山県)、ミズイカ(四国地方、瀬戸内地方、九州地方)、アオイカ/バショウイカ(静岡県)、モイカ、シロイカ(沖縄県)、アキイカ(京都府)
由来:障泥とは、泥をよけるための馬具のこと。鞍の下に掛ける布のことで、烏賊のエンペラが似ていることから、この名が付いた。
(2026年6月9日加筆)