いか・たこ

墨烏賊の握り寿司の画像
墨烏賊の握り

墨烏賊の握り

【握り寿司: イカ・タコ】
コウイカは墨袋が大きく破れやすいために、市場では墨にまみれた姿で並び、墨烏賊と呼ばれることが多い。スミイカは、江戸前寿司で古くから重視されてきたイカの代表的な存在である。身は非常に白く美しく、適度な弾力とともに歯切れの良さを持ち、口中でほどけるような食感が特徴である。身質がしっかりしているため、基本的には過度な隠し包丁を入れず、そのままの質感を活かして握られることが多い。

スミイカは食感の特性により甘みは穏やかに感じられ、むしろ旨味と歯切れの良さが際立つ。アオリイカのような強いねっとりとした甘みの印象とは異なり、上品で落ち着いた風味を持つ点が特徴である。江戸前寿司においては、こうした“ねっとりした甘さ”よりも、魚介本来の質感や香り、切れの良さを重視する考え方があり、スミイカはその代表的な素材の一つとして扱われてきた。

晩夏に出回る新烏賊と呼ばれる小振りのものが、歯応えが柔らかく寿司通に珍重される。それが冬を迎えると肉厚になり、うま味を増す。握りにする際には、塩やすだちなどの柑橘を合わせることで旨味を引き立てることがあり、酢飯との調和の中で繊細な甘みが感じられる。また、店によっては大葉や海苔を軽く添えて香りのアクセントを加えることもある。

個人的な見解かもしれませんが、東京の寿司屋では、アオリイカやケンサキイカよりスミイカの方が握り寿司には多く使われていると感じる。

【スミイカの生態】
墨烏賊(スミイカ)は関東以西、東シナ海や南シナ海の砂泥の底近くに生息する。その名の由来は大量に墨を吐くことからきている。正式名称はコウイカだが、スミイカの方が通りがいい。胴長は16cmになる。産卵期は2~4月で、内湾に集まり、海藻などに卵を産み付ける。寿命は1年。

イカは貝から進化した生き物だ。コウイカ類は貝殻の名残り「甲羅状の骨」を体の中に持っているので、コウイカという。コウイカの他、カミナリイカ、シリヤケイカなど、舟状の甲を持つ烏賊を総称してコウイカと呼ぶことも多い。また市場ではハリイカと呼ばれることもあるが、これは同属異種のやや小型の烏賊のことで、韓国産のものが多く流通している。

【スミイカの旨み成分】
スミイカ(コウイカ)の旨みは、遊離アミノ酸と核酸系旨み成分の複合によって生まれる。生の可食部100 gあたりの遊離アミノ酸では、グルタミン酸が約1,900–2,000 mgと最も多く含まれ、これはうま味(旨み)を直接的に形成する主要成分である。他にも、プロリン(約670–1,100 mg)やアラニン、アスパラギン酸などが比較的多く含まれ、噛んだときの味の厚みややわらかな風味に寄与する。一方で、グリシンはプロリンやアラニンに比べると量が控えめで、甘味は薄い傾向にある。また、魚介類一般において核酸系うま味物質(イノシン酸)はグルタミン酸と組み合わせるとうま味の相乗効果が生じ、旨みを強く感じさせることが知られている。このように、スミイカはグルタミン酸を主軸に、プロリンやアラニンなどの遊離アミノ酸がバランスよく含まれ、うま味とコクを生むため、刺身や寿司などの生食でも旨みの厚い味わいが楽しめる。

またたんぱく質は非常に消化吸収が良く、けがの回復期にある患者などにも勧められる。またコレステロールを排泄する胆汁酸の分泌、肝臓の解毒作用を促進するとされるタウリンを豊富に含有する。イカスミには防腐効果がある。

【スミイカの栄養成分】
スミイカ(コウイカ)は、甲イカ科に属する海産物で、低カロリーで高たんぱくな食材です。生の可食部100gあたりの栄養成分は、エネルギーが約64〜66kcal、たんぱく質が約14.9gと豊富で、脂質は0.3〜1.3g、炭水化物はほぼ0gです。ミネラルもバランス良く含まれており、ナトリウム約280mg、カリウム約220mg、マグネシウム約48mg、リン約170mg、亜鉛約1.5mg、銅約0.45mg、鉄約0.1mgです。ビタミン類では、ビタミンB12約1.4µg、ビタミンE約2.2mg、ナイアシン約1.3mg、ビタミンB6約0.06mg、葉酸約3µgが含まれます。

【スミイカの漁法】
定置網、底曳網、いか籠、釣りなど

【スミイカの基本データ】
分類:コウイカ目コウイカ科コウイカ属
学名:Sepia (Platysepia) esculenta Hoyle,1885
地方名:ハリイカ、マイカ、ホンイカ、カブトイカ、スミイカ
由来:捕まえた時に、大量に墨を吐くことから、その名が付いた。

(2026年6月8日加筆)

主産地

瀬戸内海 三河湾 九州

名産地

出水 富津

秋~春