煮もの(NIMONO)

鰻の握り寿司の画像
鰻の握り

鰻の握り

【握り寿司: 煮もの】日本では昔から食べてきたが、もっと以前の古代ギリシャ、ローマの人々も好んで食べていた。市場に出回る鰻は、ほぼ養殖物。天然物は1%も満たない貴重品だ。ふっくらとした身から滋味に満ちた脂が溶け出し、食べると歯応えを残しながらも、ほろほろと崩れる身はとても柔らかい。そこにタレの甘み、焼き目の香ばしさ、さらにシャリの酸味が重層的な味を生み、なんとも言えない美味しい味となる。

鰻は日本の水産庁の消費動向調査に基づく「日本人が食べたい魚」のランキングのいつも第一位である。夏の暑い盛りには鰻の消費量が年間で最も多くなる。古くから日本人は鰻を栄養の高い食品と捉え、夏バテ対策に好んで鰻を食してきた。

ここでは鰻の栄養と機能成分の特徴について説明したいと思います。

日本国内を流通する鰻は、かつてはヨーロッパウナギも出回っていたが、現在では多くがニホンウナギである。日本では、鰻の食べ方と言えば、圧倒的に人気が高いのが「蒲焼き」である。蒲焼きとは、主に、鰻や穴子などを開いて中骨を取り除き、串を打った上で、素焼きしてから濃口醤油、みりん、砂糖、酒などを混ぜ合わせた濃厚なたれをつけて焼く魚料理である。

興味深いことは、味に深く関連する遊離アミノ酸は、他の魚種より比較的低値である。加熱しても脂肪酸組成と量に変動なく、また、遊離アミノ酸にも大きな変化がないことから、鰻自体の味は他魚種に比べ淡泊であることになる。したがって日本人が想像する鰻の味には蒲焼きのたれが大きく寄与している。

鰻とその他数種の魚肉(鮃、鯵、鰯、鰹など)及び畜肉(牛、豚、鶏)の一般成分を比較すると、鰻はエネルギー量が可食部100gあたり255kcalと一番高く、脂質(19.3g/100g)も最大である。その上、牛肉や豚肉よりも繊維が極めて少量で消化しやすい。

コラーゲンはすべての脊椎動物に存在するが、中でも鰻は特異的に多く含まれている。コラーゲン繊維は鰻の遊泳時に長い体のねじれを防ぐ役目をする。鰻のコラーゲン含量は筋肉たんぱく質の8.8~12.8%もあり、マイワシの1.6%、真鯛の2.9%と比較して明らかに多い。ちなみに鰻と同じような体形の穴子では11.7%で、近い値を示す。魚の刺身のコリコリとして食感は、身肉の死後硬直の状態にもよるが、コラーゲン含量の影響も無視できない。鰻の身肉はコラーゲンが多いことが災いして、とても刺身では食べられない。

筋肉に含まれるミネラルのうち、カルシウムは100g中130mgと、他の食品に比べて含量が多く、牛乳を超える。また、身肉にはビタミン A,E,Bが豊富に含まれる。ビタミン Aは、50gのかば焼きに、成人男性1日の必要摂取量を超え、ビタミン Eとともに脂質の酸化を防いでいる。ビタミン B1を魚介類の中で特に多く含み、ビタミン B2、パントテン酸も他の魚類よりも多い。一方、キモ(内臓)には、ビタミン A及び葉酸の含有量が極めて高いことが特徴である。

【トレビア】
日本では万葉集に夏バテ防止にウナギを勧める歌が残っているほど、古くから食用とされてきた。現在でも土用の丑の日にウナギを食べる習慣があるが、これは一説によると江戸時代の本草学者である平賀源内が、夏に鰻が売れないことを悩んでいた馴染みのウナギ屋に頼まれて、「丑の日に『う』の字が附く物を食べると夏負けしない」という民間伝承からヒントを得て、「本日丑の日」と張り紙をするよう提案しましたのが定着したといわれている。

【ウナギの目利き】
ウナギに限らず、頭の方と尾の方では味や食感が違う。どちらが美味しいか好みにもよるが、一般的に、たくさん動いている部位ほど身がしまって旨い。つまりウナギも尾の方が旨い。ただ、柔らかな食感と脂の乗りを重視するなら、頭(腹)の方がいいかもしれない。身が丸々として張りのあるもの、皮に光沢のあるものを選ぶこと。

【ウナギの漁法】
落鰻を捕る梁、一本釣り、置鉤、縄釣り、ウナギ掻き、ウナギ筒、待網など

【ウナギの基本データ】
分類:ウナギ目ウナギ科ウナギ属
学名:Anguilla japonica Temminck and Schlegel,1847
地方名:クロメ、アオバイ(岡山県)、ヌチャウナギ/ヤアクヮヤ/ウナジ(沖縄県)、エドマエ/カニクライ(東京都)、オナギ(大阪府、兵庫県、鳥取県、徳島県)、カワヤツメ(北海道)、サジ(栃木県)、フト(愛知県)、メソッコ(千葉県)、カヨコ(千葉県)、スベラ(長野県)、、チュウ(浜名湖)、リンズウナギ(高知県)
魚名の由来:古名は、「むなぎ」と記されている。「む」は「身」、「なぎ」は「長し」という意味です。

主産地

鹿児島 愛知 宮崎 静岡

名産地

一色 焼津

秋~冬(天然) 初夏(養殖)