【握り寿司: イカ・タコ】
ヤリイカは「冬イカ」とも呼ばれ、春の産卵期を目前に控えた冬に特に美味しくなる。切り付けた身はうっすらと透き通るような白さを帯び、その端正な見た目も魅力の一つである。適度な歯応えがあるため、繊維に沿って隠し包丁を入れ、食感を整えながら上品な甘味を引き出す。また、さっとボイルしたヤリイカにシャリを詰める印籠詰めは、江戸前寿司に伝わる古い仕事の一つとして知られている。
ヤリイカの味わいは、グリシンやアラニン、プロリンなどの遊離アミノ酸に加え、アデノシン一リン酸(AMP)などの呈味成分によって形成される。甘味をもたらすグリシンも含まれているが、アオリイカほど豊富ではないため、甘味は比較的穏やかで、上品で軽やかな味わいが特徴である。
ヤリイカは刺身や寿司ネタとして生で食べられるほか、細く麺状に切ったイカそうめんでも親しまれている。また、加熱しても身が硬くなりにくく、甘味が増すため、焼き物や干物としても美味しく味わえる。
一般に魚介類は産卵期が近づいて卵を抱えると、身に蓄えられた栄養が卵へ回るため敬遠されることが多い。しかし寿司屋では、たくさんの卵を抱えたヤリイカを煮付けにし、その濃厚な旨味を酒の肴として楽しむこともある。古くから受け継がれてきたこうした仕事を大切にする寿司職人が少なくなっているのは、どこか寂しいことである。
【ヤリイカの生態】
槍烏賊は、北海道南部以南、九州から東シナ海、黄海の沿岸・近海に分布する。100m以上の深い沖合で、小魚などを追いかけて群れを作り生息している。胴長は40cm以上になる。産卵期は2~6月で、産卵は海表面から水深60~70mぐらいの所で行われる。寿命は1年。
【ヤリイカの栄養と効能】
ヤリイカは高たんぱくで低脂肪の食材で、肝臓の機能強化や血中脂質の調整に寄与するとされるタウリンを豊富に含んでいる。さらに、少量ながら血液をサラサラにするとされるEPAやDHA、良質のタンパク質、発育や免疫機能維持に役立つ亜鉛も含まれている。コレステロールはやや多めだ。
【ヤリイカの漁法】
底曳網、定置網、釣りなど
【ヤリイカの基本データ】
分類:ツツイカ目ヤリイカ科ヤリイカ属
学名:Heterololigo bleekeri (Keferstein,1866)
地方名:シャクハチ(長崎県)、テッポウ、ササイカ、サヤナガ(富山県)、サヤイカ、ツツイカ、ゴウイカ、ミズイカ、テナシ、ヤリンボ、ヤリケン、テナシテッポウ
由来:先が三角形に尖っており、その姿が槍の穂先に似ているから、その名が付いた。
(2026年6月11日加筆)