【握り寿司: 赤身】槍のように長く尖った口先は、吻と呼ばれるもので、それがカジキ類の大きな特徴だ。暖流域を回遊する大型魚で、体長3m、重量100kgを超える。太平洋、インド洋などの温帯、熱帯、亜熱帯海域に広く生息する。そして海の食物連鎖の頂点に位置し、鰯や鯵は勿論、鰹、鮪、そして甲殻類などを餌にする。鮪の赤身に似た色を持つマカジキは、鮪に比べて色変わりしにくい点から、かつては出前の多い寿司店などでよく使われた。
ヘミングウェイの「老人と海」という作品で、世に知られるようになったカジキは食べるというよりスポーツフィシングの意味合いが強い。マカジキは江戸前寿司で古くは上物の魚として扱われていた。春を思わせる赤みの掛かった身は、上品かつしっかりとしたコクがある。マグロとは違う脂の旨みは食通をうならせる一品だ。マグロが好きで、それも赤身よりトロという人にはマカジキはオススメ。肉質はどの部分も脂のっているのが特徴だ。
大抵の魚は脂の乗った腹身が旨いと言いますが、カジキに限って、脂が平均していて身の締まった背がオススメです。マグロと違うのは、頭と尾に近い所が筋っぽいので、背でも腹でもない「分かれ身」がよい。それとマカジキ以外のカジキはすしネタにしない江戸前寿司の伝統があり、メカジキなどの評価が低い。
寿司ネタにする場合、少し厚めに切った方が鮪の味に近づく。ただし、マカジキの身肉は黒鮪に比べると、筋が複雑で硬いので、切り方によってはその筋がかなり気になるので、すし職人の経験が物を言う。市場に入荷されるカジキは頭を落とし、頭の方から胴を30cmくらの間隔で4つに切る。頭の方から、一の切れ、二の切れ、三の切れ、四の切れと呼び、その中でも二の切れが、一番使い勝手が良く、旨いので、寿司店は二の切れを仕入れる。下身よりも、上身の方が高い値段で取引されるのは、マグロと同じです。高級寿司店でさえ滅多にネタケースには並ばないので、機会があれば是非とも食べたい。
【マカジキの漁法】
突棒、延縄、流網など
【マカジキの基本データ】
分類:スズキ目マカジキ科マカジキ属
学名:Tetrapturus audax (Philippi,1887)
地方名:ツン(長崎県壱岐)、オカジキ(福島県小名浜)、ナイランボウ(千葉県)、ハイハゲ(宮城県)、サシ(北陸地方)、ナイラギ、ノウラギ(関西)、テングサワラ(宮津)、シウトメ(紀州、三重)、ボケ(島根県)、ハナセシビ(山口県)、マゲ(鹿児島県)、アキノイオ(奄美)、マザラ(神奈川県)、サス(石川県、富山県)、ハイセ(島根県)、カジキトウシ(高知県)、アチヌイグ/チールグワー(沖縄)