白身(SHIROMI)

ノドグロの握り寿司の画像
喉黒の握り

喉黒の握り

【握り寿司: 白身
ノドグロは、鮮やかな赤色の美しい姿から「赤い宝石」とも呼ばれる高級魚です。ふんわりと柔らかな身に、白身魚らしい上品な味わいとたっぷりの脂を備えていることから、近年人気が高まった魚です。白身でありながら脂のりが非常によく、その味わいは「白身魚のトロ」と表現されることもあります。柔らかな身と脂が口の中で瞬く間に溶けてなくなるような食感も、ノドグロならではの魅力です。

寿司にする場合は、サッと炙ってから握るのもおすすめです。ノドグロは皮目がしっかりしているため、炙ることで皮の硬さが和らぎ、口に残りにくくなります。また、香ばしい香りが立つとともに、皮目と身の間にある脂が表面に浮き出ることで、ノドグロの脂の甘みをより感じやすくなります。

江戸前寿司では、もともと脂の強い魚を寿司ネタにすることは多くありませんでした。そこで、ノドグロのように脂の多い魚は、炙ることで余分な脂を適度に落とし、濃厚さを和らげることで、酢飯との相性をよくすることができます。

もちろん、生で握っても魚本来の旨みを十分に味わえます。紅葉おろしとポン酢、塩とワサビ、塩とスダチなど、さまざまな味付けが合うため、好みに合わせて注文するとよいでしょう。

最後に、寿司職人らしい小話を一つ。釣り物は、キロ当たり1万円を超えることもあります。一方、日本海で底引き網によって漁獲されたものは、脂のりが非常によい反面、漁の際に鱗が落ちやすく、身も柔らかいため、釣り物に比べて価格は安くなります。そのため、多くの寿司店では身質や見た目のよい釣り物が好まれます。しかし見た目は劣っていても味のよさを評価し、あえて底引き網物を仕入れる寿司職人もいます。これには、こうした魚をどうすればより美味しく仕上げられるかという、職人としての腕の見せどころがあるのかもしれません。

【ノドグロの生態】
ノドグロは、標準和名をアカムツといい、のどの奥が黒いことから「喉黒」の名で呼ばれています。太平洋側では千葉県以南、日本海側では新潟県以南、西太平洋から東部インド洋の暖海に分布します。水深100~200m以浅の砂泥地に生息し、体長は約30cmになります。体は長い卵円形で側扁し、体色は赤燈色で、腹部は淡く銀白色をしています。近年は、島根県の「どんちっちノドグロ」や長崎県の「紅瞳」などのブランド魚も登場しており、その人気の高さがうかがえます。

ノドグロの喉の奥が黒い理由については、深海で発光する魚や甲殻類などを食べた際、獲物から発する光が体外に漏れるのを防ぐためと考えられています。体内の光が外敵に察知されるのを防ぐことで、自らの存在を見つかりにくくする、深海魚にみられる適応の一つとされています。

【ノドグロの市場価値】
ムツの仲間は、価格の傾向を見ると、赤ムツ(ノドグロ)と黒ムツが高級魚として扱われています。特にアカムツは脂のりのよさと希少性から非常に高値で取引されます。クロムツも高級魚として評価が高く、サイズや脂ののり、漁法などによって価格が大きく変わります。ただし、時期や魚体の大きさ、産地、漁法などによって価格は変動するため、アカムツとクロムツのどちらが高いかは一概にはいえません。

ムツについては、アカムツやクロムツと単純に価格を比較することが難しいのが実情です。標準和名としてはムツとクロムツは別の魚ですが、流通や市場では両者が明確に区別されず、「ムツ」や「クロムツ」などの名称で扱われることがあります。白ムツはこれらの魚とは別に、比較的手頃な価格で流通しています。

アカムツとクロムツは冬に脂が充実します。ただ、寿司ネタとして味わいの方向性が似ているため、同じ時期にあえて両方をそろえて提供する寿司店は多くありません。仕入れの状況や魚の状態を見ながら、その日に、より質のよい方を選んで使い分けるのが一般的です。

【トリビア】
ノドグロの知名度を全国的に押し上げた人物として、テニスの錦織圭選手も忘れてはいけません。2014年の全米オープンで準優勝した後の帰国会見で、食べたいものを聞かれた錦織選手が「ノドグロがあったら食べたい」と発言したことが大きな話題となりました。これをきっかけに「ノドグロって何?」という問い合わせが全国から寄せられ、島根県など産地での知名度も一気に高まりました。錦織選手は島根県松江市の出身であり、地元・島根の名物を挙げたことが、結果的にノドグロの知名度を全国へ広げるきっかけとなりました。

【ノドグロの調理のポイント】
ノドグロは河豚と並んで内臓の匂いが強いため、内臓を魚体から外したら、料理に使えるエラや肝を取り分け、残りの内臓はすぐに包んで処分すること。骨やヒレも美味なので、三枚におろした時に出る中骨や頭、ヒレ類はそのまま焼いて湯注ぎやヒレ酒にするとよい。またよく焼いて砕き、出汁で伸ばしてすり流しにしてもよい。肝は塩辛にする。

【ノドグロの目利き】
背の赤色が黄金色に輝き、腹の白いもの、大きな目に透明感のあるものが新鮮です。うろこは大きくはがれやすいが、鮮度とはあまり関係がない。

【ノドグロの漁法】
底曳網、刺し網、底釣りなど

【ノドグロの基本データ】
分類:スズキ目ホタルジャコ科アカムツ属
学名:Doederleinia berycoides (Hilgendorf,1879)
地方名:アカウオ(高知県)、キンギョ(広島県)、メブト(長崎県)、ダンジュウロ、ギョウスン(富山県四方)、トラハツメ(富山県)、キンメ(高知県)
魚名の由来:魚の喉の奥が黒いから、その名が付いた。
栄養成分:脂質含有量25%〜30%

(2026年8月11日加筆)

主産地

石川 島根 長崎

名産地

対馬 銚子 佐島