【握り寿司: 光り物】鯖の仲間は亜熱帯から温帯海域に分布し、世界で3種知られている。日本近海にはマサバと胡麻鯖が分布している。それと大西洋鯖はその名の通り、北部北大西洋産で、日本の食卓ではすっかり馴染みの鯖となっている。主にノルウェーなどから輸入され、脂肪含有率が約27%と、鮪のトロに匹敵するほどに多い。日本のサバの斑紋はやや緑色であるが、ノルウェー産は斑紋が黒くはっきりしている。
マサバは日本列島近海、世界中の亜熱帯、温帯海域に分布している。寒海性の回遊魚で、表層で群れをなし、春から夏にかけて産卵しながら日本沿岸を北上し、秋から冬にかけて南下してくる。日本列島周辺の長い距離を回遊するタイプと、比較的狭い地域を回遊するタイプがあり、後者が美味とされている。産卵期は春から初夏。1年で約25cm、3年で35cm以上に成長する。寿命は6~7年、全長は50cmぐらいになる。
ブランド鯖と呼ばれているのは豊後水道の『関サバ』、五島列島の『旬サバ』、豊予海峡の『岬サバ』、宮城県金華山沖の『金華サバ』、松輪の『黄金サバ』と覚えきれないくらいある。関サバはアジに近い質感で味も爽やかな感じですが、金華サバは大型で脂がたっぷりのっています。黄金サバは、全身にほどよく脂があって身が柔らかく、シャリに馴染む。
酢で締めた鯖は、水分も脂質も締める前と数%しか変わらない。しかし、締めると酢の作用によって、脂っこさが無くなります。また、塩や酢の働きで、細菌の増殖も抑えられるので、鮮度低下が遅れる。さらには魚臭さの成分のトリメチルアミンを除去し、ヒスタミン中毒の原因物質であるヒスタミンを中和されるので、しめ鯖は安心して食べることができ、そして美味しいものになる。
古くは、脂分が多く鮮度落ちが早いため、塩と酢で締めて食べることが多かったが、最近では生を使った握りも珍しくない。塩締めしたサバには、甘酢っぱく煮た白板昆布が載せてあることがある。これは甘みを効かせると酸味が和らぐ。その上、仕込み時にまぶした塩味とのバランスもとれ、より美味しくなることを狙っている。脂がたっぷりのった鯖の握りは寒くなる季節のごちそうだ。青魚が持つ深い旨みがいつまでも舌の上に残る一品だ。新鮮な刺身も美味しいのですが、アニサキスなどの寄生虫の心配があるので、注意が必要である。
【トレビア】
日本では古くから大衆魚として親しまれ、贈り物にも用いられてきた。江戸時代には七夕の前後に大名から将軍家にサバを献上する習慣があったという。後にサバの代わりに金銀が使われ、さらに時を経て、今日のお中元の風習になったといわれている。
【鯖の目利き】
鯖特有の斑紋が鮮やかなもの、腹が銀色のもの、そして目が澄んでいるものは鮮度がいい。食べ頃は1kg前後のもので、腹がまるまるとしているものは脂のりもいい。
【鯖の栄養と効能】
鯖は良質なたんぱく質が豊富で、青魚の中でたんぱく質の含有量が一番多い。脂肪量はそれほどでもなく、鰯や秋刀魚より低い。旬の時期に獲れるものは脂肪が豊富なので、EPAやDHAなどの脂肪酸を大量に含んでいる。また、ミネラル類では、高血圧を予防するカリウム、貧血を改善する鉄などが多い。ビタミン類ではカルシウムの吸収率を高めて骨を丈夫にするビタミン D、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解するナイアシン、悪性貧血を予防するビタミン B12などを豊富に含んでいる。血合い部分にはビタミン A、Eなどを極めて豊富に含む。
【鯖の漁法】
戦後には、はね釣漁、サバたもすくい網漁など、近年では、巻き網などとなる。
【サバの基本データ】
分類:スズキ目サバ科サバ属
学名:Scomber japonicus Houttuyn,1782
地方名:ホンサバ(関西地方)、タックリ(鹿児島県)、ヒラス(長崎県)、ヒラサバ(中国地方、四国地方)、ヒラゴマ(千葉県南部)、サワ(富山県)、ノトサバ(宮城県仙台)、モサバ(広島県)、ソコサバ(新潟県)、グルクン/グルクマア(沖縄県)、ホシサバ/サボ(秋田県象潟)、アギフラキア(奄美)
魚名の由来:歯が小さいことを表す「小歯(さば)」「狭歯(さば)」から名が付いたとされる。