【握り寿司: 光り物】サヨリは、日本の沿岸のいたるところに生息し、内湾、外洋を問わず表層で生活している。全長は40cmに達する。春から夏の産卵期になると流れ藻などの集まり、群れで産卵する。産卵期は地域によって異なり、千葉県の外房では2~4月、東京湾では3~5月、青森県陸奥湾では6~7月である。サヨリはサバやアジほど背は青くありませんが、わずかに青みを帯びているので、すしネタとしては、光り物の仲間としています。
春の訪れを告げる江戸前の寿司ネタとして、人々に愛されてきた。美しい澄んだ身は、さっぱりとしていて(脂質含量はわずか1.3%)、細魚独特の風味が後を引く味わいだ。生臭みを消すため、かつては塩と酢で軽く締めていたが、近ごろは生で握ることも増えた。伝統の仕事ではネタとシャリの間に甘いおぼろを挟んだりもする。
また、サヨリの昆布締めを好む職人もいる。鮃などの白身魚と比べると、ほろ苦さと青魚特有の味の濃さがある。そこで、同じ昆布締めでも昆布の強い旨みをしっかり移すのではなく、ほのかに付ける程度にして、サヨリの個性を生かす。鮃など、強めに昆布の風味を移したい昆布締めには新しい昆布を使い、サヨリのように軽く締めたい時に、一度使った昆布を使うとよい。
体長30cmを超える物を「かんぬき」と呼び、刺身用に珍しいものとして大切にされるが、すし職人が好むサイズは、片身付けとなる小ぶりなものだ。でも鮨たかはしの髙橋潤氏のように、敢えて味わいが深いかんぬきを使う職人もいる。
最近は、韓国からの輸入物が増えているが、味は大味で回転寿司などで使われる。身に透明感がなく、白濁した物は中国産の冷凍物だ。またオーストラリアやニュージランドからも輸入されている。
【トレビア】
体が細く、背部が青緑色、腹部が銀白色という外見の美しさから「海の貴婦人」とも称されるが、腹膜が真っ黒なため、悪巧みをする人にたとえて「美人だがサヨリのように腹黒い」ということもある。
【サヨリの目利き】
腹が銀白色なものが鮮度がいい。鮮度が落ちてくると褐色に変化してくる。そして針のような下顎の先が、紅色で鮮やかなものも、鮮度がいい。
【サヨリの栄養と効能】
魚の中ではたんぱく質が少ない方で、エネルギーも低く、特に脂肪の少なさは群を抜いている。全体的に栄養価が低い中で、亜鉛とナイアシンがやや多い。さらに脂肪含有量が低い割にはコレステロールが多いのも特徴の一つである。
【サヨリの漁法】
機船船曳網、刺網、地曳網、延縄、巻き網など
【サヨリの基本データ】
分類:ダツ目サヨリ科サヨリ属
学名:Hyporhamphus sajori (Temminck and Schlegel,1846)
地方名:サイラ(高知県)、サイレン(香川県)、スズ(和歌山県)、スズサヨリ(紀州)、クチナガ(岩手県宮古)、サイチ(高知県)、サイヨリ(福井県)、シマザイラ(三重県)、セロ(千葉県)、ハリウオ/ハリヨ(新潟県)、ホソクチウオ(岐阜県)、ヤマキリ、ヨロズ(兵庫県)、ヨド(茨城県)、サイレンボウ、カンヌキ(東京)、ショウブ、ヨドロ(広島県)、ラス(岡山県)、ナガイワシ(鹿児島県)
魚名の由来:「さ」は狭いを表し、「より」は古名「ヨリト」が転じたとされる。