【握り寿司: 白身】フグは太平洋西部や東シナ海などの湾内に多く生息する。日本近海で獲れるフグは約50種類で、食用にするのは、トラフグ、真フグ、ショウサイフグ、カラスフグなど22種である。
フグは卵巣、肝臓、腸に猛毒を持つため、フグ調理の免許持った調理人と設備がないと調理できない。東京都では2012年にフグの取り扱い規制が緩和され、フグの有毒な部位を取り除いた身を扱えるようになった。まだ一部ではあるが、フグの握り寿司を提供する寿司店が出てきたばかりだ。
虎のような模様があるトラフグは日本で食用と認められているフグの仲間で最も美味とされ、かつ値段も圧倒的に高い。フグの身は脂質含量がわずか0.3%と非常に少ないので、あっさりとした旨みと上品な後味が特徴だ。活け締めして、すぐのものは身が固く(体側筋にはコラーゲンが多く、その含有量はマイワシの3倍もある)、そのため熟成期間をとり、旨みが増したところで供する。薄造りで仕立てた握り寿司は、噛み締めるごとに、旨みが広がる一品だ。旬は冬。ただ、天然物に限られたこと。養殖物は1年中市場に出回る。
フグ毒とは?
フグの毒は多くの場合、肉以外の肝臓、卵巣、胃、腸、皮、眼などに含まれている。これらの部分が無毒なフグもいるが、日本近海にいるフグはほとんど毒をもっている。調理を失敗して肝臓や卵巣の毒が身肉についてしまうと、直ちに死に至ることになる。そのためフグ調理師の免許を持っている専門家のいる店で食べることが原則になっている。フグによる中毒のほとんどが素人による料理によるところが多いからだ。
フグの毒素はテトロドトキシン (tetrodotoxin)という化学物質だから、鍋や唐揚げのように加熱しても無毒化されない。私たちが非常に美味しいと評価する虎河豚(食べている部分は、身肉、皮、精巣)も肝臓と卵巣、腸に毒素がある。毒性は青酸カリの1000倍以上とも言われる。虎河豚の一尾の臓物で、10人の人が死ぬと言う。フグ中毒を起こす場合、フグを食べてから20分~3時間で、最初の中毒症状が現れる。口唇、舌端、指先のしびれが始まります。頭痛、腹痛などを伴い、激しい嘔吐が続くこともあります。歩行は千鳥足となります。まもなく、知覚マヒ、言語障害、呼吸困難となり、血圧が下降します。その後、全身が完全な運動マヒになり、指さえ動かすことができなくなります。やがて意識が混濁し、まもなく呼吸・心臓が停止し、死に至ります。中毒症状を起こし、気がつかなかったら命を落とすことは間違いない。
フグの毒素の強さは季節によっても違う。個体によって毒素を持っている物もいれば、持っていないものもいる。その判別は外観からはできないから、毒素を持っている確率の高い臓物や眼は食べないに越したことはない。
フグはすでに養殖に成功し、市場に出回っている。この養殖フグには毒素がみつからない。養殖物には毒素がないとなると、天然物の毒素の生成の原因は何かと疑問を持つのは当然だが、どうも食物連鎖による毒素の蓄積のようだ。フグの大まかな餌と言えば、ヒトデや貝類です。このヒトデや貝類は、毒を作り出すビブリオが付着した動物性プランクトンなどを食べて体内に毒を蓄積します。そして毒を体内に蓄積しているヒトデや貝を河豚が食べる事によって体内に蓄積している。よってフグ毒を含んでいない人工飼料などで育てられる養殖フグは、フグ毒の経口摂取がなく、また生物濃縮が起きないため毒素を持たない。
【トラフグの蘊蓄】
薄造り、ちり鍋、雑炊がお決まりのコースだが、唐揚げや焼き物にしてもトラフグは旨い。白子も高級食材で、鍋に入れたり、炭火で焼く(白子の握りもある)と絶品である。大阪ではトラフグの刺身を「てっさ」、鍋を「てっちり」と呼ぶ。ここで言う「てつ」は鉄砲のことで、フグの毒に当たると一発で死ぬことからきている。
【トラフグの漁法】
一本釣り、延縄、かご漁、定置網など
【トラフグの基本データ】
分類:フグ目フグ科トラフグ属
学名:Takifugu rubripes (Temminck and Schlegel,1850)
地方名:シロ、ホンフグ(大分県別府、山口県下関)、マフグ(兵庫県、広島県、山口県下関)、ダイマル、オオフグ(香川県、岡山県)、モンフグ、ゲンカイフグ(大分県、長崎県壱岐)、シロマル、テッポウ(大阪府)、キタマクラ/モンフク(高知県)、クロモンフグ(大分県)、イガフグ(富山県)、オヤマフグ(紀州)、フク(福岡県)、クマサカ(秋田県男鹿)、クマサカフグ(新潟県石地)、トジラフグ(福岡県柳川)
魚名の由来:虎河豚の「虎」の由来は不明です。海の底を吹いて(水流)餌を食べることから、「吹く」と付いた。