白身(SHIROMI)

真鯛の握り寿司の画像
真鯛の握り

真鯛の握り

【握り寿司: 白身】
鯛は、姿・形が美しく、日本では古来より祝いの席に欠かせない魚として親しまれてきた。中でも真鯛は「白身の王様」とも称される存在である。淡泊でくせのない上品な身は、噛むほどに弾力があり、濃厚な旨味が押し寄せる。その味わいは、単なる淡白な白身魚とは一線を画す。

真鯛の脂質含量は、季節や成長段階によって変化するが、天然物ではおおよそ2.5〜5.8%程度である。一方、養殖の真鯛は10%以上の脂を持つことも多く、ときにくどく感じられることもある。天然物の産地としては、徳島の鳴門、兵庫の明石、茨城の川尻、千葉の保田などが名高い。特に瀬戸内海の真鯛は評価が高く、東京の寿司職人の中には「瀬戸内の鯛ほど美味しいものはなかなか手に入らない」という理由から、あえて鯛を握らない者もいる。かの有名なすきやばし次郎もその一つである。

その理由には、漁場だけではなく、魚の扱い方も関係している。明石港などでは、活け越し活け締めといった処理技術が発達しており、魚に余計なストレスを与えずに持ち帰る技術が極めて高い。こうした丁寧な処理によって、真鯛の身質や旨味が最大限に引き出されているのである。

また、真鯛は季節によって呼び名まで変わるほど、日本人はその旬の移ろいを大切にしてきた。天然物は1〜2月に走りを迎え、3〜4月に旬となり、4月半ば頃に名残となる。春、産卵のために瀬戸内海沿岸へ回遊してくる真鯛は「桜鯛」と呼ばれ、特別に美味とされる。一方、冬に備えてたっぷりと餌を食べ、身に栄養を蓄えたものは「紅葉鯛」と呼ばれ、脂の乗った味わいが魅力だ。逆に、初夏の産卵後で味が落ちたものは「麦藁鯛」と呼ばれる。こうした呼び名からも、日本人が鯛を四季とともに味わってきたことがわかる。

寿司における鯛の楽しみ方は、大きく二つある。一つは皮を引き、白身そのものの繊細な甘みと旨味を味わう食べ方。そしてもう一つが、皮を残したまま湯をかける皮霜造りである。皮目の香り、皮下脂肪のコク、白身の上品な旨味を一度に楽しめる。

さらに、真鯛は締めた直後よりも、活け締めにしてから1日ほど氷蔵し、熟成させた方が旨味が増すとされる。時間の経過とともに身の中で旨味成分が生成され、味わいに深みが加わるためだ。これに対して養殖の鯛は、時間を置くことで独特の臭み (養殖用の餌に起因する)が出やすく、水揚げ直後に「活き造り」で食べた方が美味しいとされる。つまり、熟成によって旨味を引き出す江戸前寿司の考え方とは、天然物の真鯛の方が相性が良いのである。

一般に関東の寿司屋では、白身魚の代表格として真鯛を用意している店が多い。客が「白身を握ってください」と頼めば、鯛、鮃、鰈のいずれかが出てくることが多いだろう。その中でも真鯛は、季節感、産地、締め方、熟成、そして皮の扱いによって表情を変える、是非食べてほしい寿司ネタである。

【マダイの生態】
日本産魚類は現在約3900種が知られていますが、その内なんと約360種の標準和名は「○○鯛)」です。ところが本家と言うべきタイ科魚類は、マダイ、チダイ(チコダイ)、キダイ(レンコダイ)、キビレアカレンコ、ホシレンコ、ヒレコダイ、タイワンダイ、クロダイ、キチヌ、ミナミクロダイ、ナンヨウチヌ、オキナワキチヌ、ヘダイのわずか13種に過ぎません。この13種は外観の赤い鯛と黒い鯛に分類できます。赤い鯛は、マダイ・チダイ・キダイ・キビレアカレンコです。黒い鯛にはクロダイ・キチヌ・ヘダイ・オキナワキチヌ・ミナミクロダイ・ナンヨウチヌです。寿司ネタとして一般的なのはマダイ・チダイ・キダイ・クロダイとなります。

馴染みがある石鯛、金目鯛、エボダイなどは、タイ科とは縁のない魚となります。

【マダイをおろすときのポイント】
鯛は兜の価値があり、味も大変よいので、頭に身を付けて切り口をまっすぐ見栄えよく切り落とす。斜めに切ってしまうと、身に無駄が出る。ただし、兜料理を作らないなら頭の落とし方を変える。頭になるべく身を残さないようにして付け根ぎりぎりで頭を落とし、上身を少しでも大きく取る。

鯛はウロコや骨が硬くておろしにくい。頭を落とすときのポイントは胸鰭の付け根から鱗3枚目のところに包丁を入れると血が出にくく身も汚れない。また頭を梨割りにする場合は、真っ二つを目指すと途中で包丁がつかえるが、中心から1mmほどずらす気持ちで包丁を入れるといい感じで切れる。

【トレビア】
・体の淡紅色が魔除けになると信じられ、さらに立派な姿と上品な味のため、婚礼や祭りなどの祝い事に欠かせない魚として重宝されてきた。奈良時代の皇族や平安時代の貴族、室町時代の足利将軍などの献立の記録に鯛の名ががある。織田信長が徳川家康を饗応した際の膳にも鯛が含まれていた。しかし、中国では「死者の肉を食べる魚」と言われている。またフランスでは「貪欲な下魚」と呼ばれ、価値が低く、まったく逆の評価となっている。

・尻ビレ近くの血管棘が疲労骨折が再生し、こぶ状になる。これは魚の病気ではなく、鳴門の渦潮を泳ぐことから発達するとも言われる。これは鳴門骨と言われ、美味しい鯛の証でもある。

【マダイの信仰】
伊勢神宮では多くの神饌が供えられますが、鮑、鰹節、鯛は貴重なお供え物の一つです。神様と鯛と言えば、七福神の一人である恵比寿さまが大きな鯛を抱いている姿は、海からの幸を携えて、恵みをもたらすと言うイメージになる。また鯛は結納、結婚、誕生、新年を言祝ぐなど、慶事を表す魚として、重要な役割を担っています。例えば、大阪の商家では元旦の膳に二匹の鯛をのせ、十日戎まで飾っておきます。この鯛は「ニラミダイ」といって商売繁盛を願って供えるものです。

【マダイの目利き】
目の上が青紫色に輝いているものほど鮮度がいい。天然物は口や歯がいかつい感じである。また尾ひれが大きく、立派なのが特徴です。俗に「目の下一尺(約30cm)」や「尺鯛」というが、重量で2kg前後が美味しく、小さくなるほど味が薄い。

養殖の真鯛を見分けるには、まず尾を見ればよい。天然物は尾の切れ込みが大きく、養殖物は小さい。また天然物は鼻の穴が4つあるが、養殖物は2つしかない。以前であれば養殖物は浅いところで育てられるので、日焼けして黒っぽいとか、かつて言われましたが、最近は技術が進歩してそんな養殖物はない。それと目の下にアイラインを引いたような紫色も、養殖物でも入っているものもあるので、見分けが難しくなっている。

それと養殖物は加熱すると脂が抜けやすいことや、やや脂にクセがあるために焼物や揚げ物、煮物にすると難点が出やすい。刺身や鍋物の方が向いている。何より養殖物は鮮度の落ちが早い事も知っておきたい点である。

また色が良すぎて、目の大きいものは輸入物と見たほうがいい。全体的に細身なのは、ニュージーランドやオーストラリアの鯛の特徴である。

【マダイとワインのペアリング】
シャブリ

【ブランド養殖真鯛】
高知県須崎市浦ノ内湾:海援鯛
愛媛県宇和島:愛鯛
和歌山県串本町:梅マダイ

【マダイの漁法】
一本釣り、延縄、刺網、定置網、底曳網、吾智網、敷網、追込網など

【マダイの基本データ】
分類:スズキ目フエダイ科フエダイ属
学名:Pagrus major (Temminck et Schlegel, 1843)
地方名:ホンダイ(関西、愛知県、広島県)、メヌケダイ(長崎県)、オオダイ、ホンタイ、タイノユウ(鹿児島県奄美)、マコダイ(鹿児島で幼魚を指す)、タイチャリコ(幼魚:大阪)、ネブドコ/メダ(幼魚:富山湾)、ベン(東京都)、チャリコ(大阪府堺)、イラサ、コダイゴ(福岡県)、東京では若魚から順にマコ、チュウダイ、オオダイ、トクオオダイと呼ぶ。
魚名の由来:他の魚に比べ、薄い体であることから「平ら(たいら)」の「たい」が由来である。真鯛の「真」は文字通り「代表的な」と言う意味です。
栄養成分:青魚以外の魚の中ではトップクラスにDHA・EPAが多く含まれています。(DHA780mg、EPA520㎎)100gのカロリー112kcal。

(2026年5月15日加筆)

主産地

瀬戸内海 長崎 熊本 鹿児島

名産地

明石 加太 佐島 

冬~早春