【握り寿司: 白身】
白身魚は、春は鯛の旨み、冬は鮃の香りを味わうと言われる。そして、夏を代表する白身魚が鱸である。鱸は独特の香りがあるため、厚く切らず、薄造りにしたほうが美味しい。身には弾力がありながらもやわらかさがあり、噛むほどに白身魚らしい上品な甘みが広がる。ただし、鱸は淡水が流れ込む内湾にも入り込む魚のため、時に泥臭さを感じる個体もある。
また、鱸は成長によって名前が変わる出世魚である。20〜30cmほどを「セイゴ」、40〜60cmほどを「フッコ」、60cm以上を「スズキ」と呼ぶ。すしネタとして使われるのは、主にフッコほどの大きさである。
鱸は、身と皮の間にある“皮ギシ”に旨みが強く、好む人も多い。そのため、握りでは皮に熱湯をかけてやわらかくした“皮つき”で提供されることもある。昔は、夏に鮮度の良い鱸が手に入ると、「洗い」にして食べていた。薄切りにした身を氷水に入れ、白くなるまで締めることで余分な脂を落とす。こうすると、引き締まった歯触りの良い食感を楽しめる。
【スズキの生態】
鱸(スズキ)は北海道南部以南の日本各地の沿岸、朝鮮半島南部に分布します。成魚は岩礁域から内湾に生息し、若魚は汽水域から淡水域に侵入する。1歳で約20cm、3歳で約40cmに成長し、全長1mぐらいに達する。体色は黒っぽい銀白色で、全体にいぶし銀状の光沢がある。産卵期は東京湾で10~2月、瀬戸内海では10月~1月、若狭湾では12月~1月、九州では11月~3月と、地域により異なります。
【スズキの代替魚】
養殖されたタイリクスズキが中国、台湾、韓国などから輸入される。トルコやギリシャなどで養殖されている種と同じとされる。
【スズキの調理のポイント】
身の活用方法は洗いや焼き物、蒸し物、椀だねが代表的である。皮や頭、胃袋は味がよい部分で、中骨もエラもきちんと下処理すれば美味しく食べることができる。イタリア料理やフランス料理でも使われる活用の幅が広い魚である。おろし方は、いわゆる三枚おろしと同じ手順だが、日本料理の世界ではスズキの場合、正式には長おろしと呼ぶ。鱗や骨が硬いこと、中骨に白い膜が付いていて包丁だけではおろせないなどの特性があるので、他の魚とは違った配慮が必要だ。
【トレビア】
鎌倉時代の軍記物語「平家物語」には、平清盛の船にスズキが飛び込んできた後に天下をとったと記されており、スズキは出世を象徴する魚と言われたきた。古くから食用とされ、江戸時代には、煎り酒と酢でスズキを煮立たせた煎り鱸という料理があった。
【スズキの目利き】
締めてあるものは、エラの裏の赤が鮮明なものほど、鮮度がいい。太っていて、尾の付け根まで身が入っているものは、美味しい。天然物は身が透き通っているが、養殖物は白濁していることがある。
【鱸の栄養と効能】
低脂肪、高タンパク質という白身魚の特徴を持っている。魚類の中で群を抜いて多い鰻や内臓ごと食べる鮎や小魚を除くと、ビタミンA含有量は特異的に多い。脂肪の含有量はそれほど多くなく、脂肪酸の割合が青魚とは異なっている。青魚に多いEPAやDHAよりも、オリーブ油に多い、オレイン酸や牛肉や豚肉に多いパルミチン酸を多く含んでいる。さらにカルシウムとリンの吸収を助けて骨を丈夫にするビタミンDも比較的たくさん含んでいる。特に皮の部分に多く含まれているので、皮も残さず食べてほしい。脂肪が少なくエネルギー量が低いので、生活習慣病が気になる方でも安心して食べられる。
【スズキとワインのペアリング】
リースリング
【スズキの漁法】
巻き網、地曳網、磯刺網、定置網など
【スズキの基本データ】
分類:スズキ目スズキ科スズキ属
学名:Lateolabrax japonicus (Cuvier,1828)
地方名:シーバス、セイゴ(幼魚:東京都)、コッパ(セイゴより小さいもの:東京)セエゴ(幼魚:山口県、高知県)、セッパ(幼魚:宮城県)、トンガリ(幼魚:千葉県)、フツコ(若魚:東京都、関東)、マタカ(愛知県、三重県)、ハタラ、マダカ(愛知県知多)、ハネ(若魚:関西)、メイゴ(幼魚:越後)ユウド(老成魚:越後)、オオタロウ(東京都)、カワスズキ(高知県)
魚名の由来:身が白く、濯いだような魚からきているなど。
(2026年5月15日加筆)